脳と身体のメカニズム/感情脳という視点
たとえば、子供のころに、犬に追いかけられて、大変怖い思いをしたことのある人は、今でも犬を見るだけで、なんとなく不安や不快な気持ちになったりします。これは、「扁桃体」という過去の感情記憶が蓄積されている脳の一部を「瞬時に」参照するからなのです。これを感情回路とよびます。

ただし、「大脳皮質」とよばれる脳の一部が、その後、「なんとか対処できる」というような論理的な決断や判断を行うので、場合によっては、少し安心することができます。これを認知回路とよびます。

何度にもわたるいじめ・嫌がらせなどの被害体験、また、レイプなどの強烈な恐怖体験は、扁桃体に蓄積されていきます。その後、恐怖体験に関連するものを見ただけで、扁桃体が視床下部へその恐怖体験を伝え、不安・緊張などのストレス反応が起こるのです。しかも、これは無意識に行われます。
いじめ・嫌がらせを行う加害者を見るだけで、体が震え、冷静に考えられないのはこのためなのです。そのとき、たとえ加害者が何もしなくても、過去の体験が想起され、ストレス反応が起こるのです。一度、このような状態になってしまうと、元に戻すのはなかなか難しいのです。
カウンセリングなどによって、この認知回路を修正して、加害者に冷静に対処できるようにする、という心理的アプローチに、「認知行動療法」とか「認知療法」があります。これも効果があるのですが、感情回路に直接的に介入する必要もあるのです。
感情脳の驚くべきメカニズム
脳の内側には、「脳のなかの脳」ともいうべき「感情脳」が存在する。これは、「新皮質」(言語と思考をつかさどる脳のもっとも“進化した”部分)の残りの部分とは異なる構造、異なる細胞組織、さらに異なる生化学的特徴を持っている。実際に、感情脳はしばしば、新皮質とは無関係に働く。言語と認知が感情脳に対して与える影響は制限されている。

感情脳は、それだけで、心理的充足感と身体生理の大部分、つまり、心臓の働き、血圧、ホルモン、消化系、さらには免疫系までを支配するすべてをコントロールする。
感情の乱れは、この感情脳の機能不全の結果である。多くの人にとって、感情脳の機能不全は、現在とは関係なく、過去に体験したつらい経験が原因となる。過去の経験は消せないように感情脳の中に刷り込まれている。そうした経験は、ときには数十年経ってもなお、私たちの反応は行動をコントロールし続ける。
精神療法医の重要な仕事は、感情脳が、過去の状況に反応し続ける代わりに現在に適合するように、「プログラミングし直す」ことである。そのため、一般に、感情脳がほとんど影響を受けない言語や理性に働きかけるよりむしろ、身体を通して感情脳に直接影響を与える方法を使用するほうが効果的である。
感情脳は、自己治癒のメカニズムを持っている。これは、傷口の治療や感染の排除といった、身体のほかの自己治癒メカニズムと同じようなものであり、心のバランスと充足感を取り戻す先天的な能力である。身体を通して働きかける方法は、このメカニズムをうまく利用している。
本書で紹介する治療法は、この感情脳に直接働きかけ、ほぼ徹底的に言語を飛び越し、思考よりもむしろ身体によって効果が生まれる方法である。このような方法は数多く存在するが、実際の治療では、私は、厳密さと信頼性を保証する研究によって科学的に有効であると認められた方法を優先する
『フランス式「うつ」「ストレス」完全撃退法』からの引用(詳しくはコチラ)
ダヴィド・シュレベール医学博士・博士
ピッツバーグ大学病院/精神科医
この感情脳に直接働きかける方法としてコヒーレンス法(心拍一貫性法)を、それが本当に効果的に行えているかを確認するためのツールとしてエムウェーブPCを、シュレベール博士はこの書籍の中で推薦しています。

